Monday 27 December 2010

妹から教えてもらった「勝間さんのインフレ政策を実行するとどうなるのか?」というページを見ました。勝間さんのインフレ政策
要は中央銀行のお金を大量に刷って、それを借金として政府がばらまく
に対し、ブログの筆者は
実行するともっとデフレになる
と主張しておられます。ワオ、何とセンセーショナルな結論。そして、デフレを防ぐには生産性を向上させるしかないのだそうです。う~ん、それは賛成しかねますね。


マクロ経済学者が物価変動を考えるときは、総需要・総供給曲線を思い浮かべます。

縦軸が物価、横軸が実質国内総生産で総需要曲線(Aggregate Demand)と総供給曲線(Aggregate Supply)の交わる点から、均衡状態における物価と総生産量が求まります。それぞれの曲線が何なのかを説明すると話が長くなるのでマクロ経済の教科書を読んでください(手抜き)。どんな入門レベルの本にも載ってます。ただ、中には縦軸が物価の代わりにインフレ率になっている教科書もあるので、それはお薦めしないかな。

竹中平蔵さんのような経済学者は垂直な総供給曲線を仮定しておられるでしょうし、逆に流動性の罠の状態にある経済では総需要曲線が垂直であるという意見もありますが、ここでは標準的な下向きの総需要・上向きの総供給曲線を使いましょう。

まず、ブログ筆者の主張される生産性の向上をするとどうなるか。社会がより効率的になると総供給曲線が右にズレます。結果、物価が下がって筆者の主張とは逆にデフレになります。デフレになっても生産量が増えるからいいじゃんという意見は、まあなくはないですけどね。「構造改革なくして、景気回復なし!」なんて言ってた小泉さんとか。

では、勝間さんが主張される政府支出の増加はどのような影響があるか。総需要の定義は
総需要=消費+民間投資+政府支出+(輸出-輸入)
ですので、政府支出の増加は総需要の増加になり、グラフでは総需要曲線が右にズレて物価が上昇します。ブログ筆者は、政府のバラマキは生産性を下げるとおっしゃるので、総供給曲線が左にズレて、さらに物価は上昇しますね。

政府のバラマキによって生産性が低下すれば、民間部門は国内への投資を減らし、アメリカのようなリターンの大きい国に投資をするだろう。民間投資の減少分の影響が政府支出の増加分を上回れば総需要が減ってデフレになると筆者は仮定しているように読めます。勝間さんだったらそれに対して、総需要が増加するよう政府支出をもっと増やせばいいと返答するのではないかな?

この議論にはもうひとつ問題があって、為替市場が変動相場制である点が考慮されていません。アメリカに投資するためには、まず為替市場で円をドルに交換する必要があります。それは、同時にドルを円に交換したい取引相手が存在しなくてはなりません。例えば、アメリカで自動車などを売ってドルを受け取った後、それを円に両替して従業員に給料として払いたい、輸出品を生産している会社です。もし、ドルを円に交換したい会社が十分に存在しなかったら、為替市場で円安ドル高になります。すると、アメリカへの投資はハイリターンではなくなるので減る一方、日本の輸出は増え、輸入は減るでしょう。為替市場が均衡に落ち着くころには、日本国内に投資した場合とアメリカに投資した場合でリターンが同じになるようなレートになります。こうして円安ドル高になると、石油や貴金属の輸入価格が上がってしまい、総供給曲線を左にシフトするので物価上昇を招きます。

つまり、政府のバラマキによる

  • 政府支出の増大、つまり総需要の増大
  • (筆者の主張に従えば)生産性の減少による総供給の減少
  • (筆者の主張に従えば)海外投資増加による円安、そして総供給の減少

といったインフレ要因よりも、

  • (筆者の主張に従えば)民間投資の減少、つまり総需要の減少

というデフレ要因が勝つと断言できるかと聞かれれば、とても賛成できないなというのが僕の意見です。

あと、ブログ筆者は以下のようなことをつぶやいておられます(http://twitter.com/kazu_fujisawa/status/17918298339414016)。
物理学とか数学とか生化学とかサラリーマンが片手間で勉強してもその辺の大学院生にはかなわないけど、ITとか経済学ってサラリーマンが片手間で勉強するとその辺の大学院生よりよほどよく出来たりするよね。この差は何なんだろう。不思議だ。 
僕は土木工学を修士課程まで勉強しましたが、それに比べて経済学が大そう簡単だとは思えませんがねえ。

あと勝間さんの主張する、政府が日銀から借金して政府支出をするというは良いと思います。政府支出ではなく、消費税減税だともっと面白いと思います。

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